近畿大学水産研究所が設立した株式会社アーマリン近大が販売する、完全養殖クロマグロのブランド名。一般にいう養殖マグロは、海洋で捕獲した天然の幼魚をいけすで育てて成魚にする畜養という飼育方法によるものだが、対して完全養殖とは、人工孵化(ふか)させたマグロが産んだ卵をさらに養殖施設内で人工孵化させ、世代を重ねていくものをさす。マグロの稚魚や幼魚は過度にデリケートなうえ脆弱(ぜいじゃく)で、生存率がきわめて低く、完全養殖のハードルがもっとも高いものだった。同研究所はさまざまな高級魚養殖で培ったノウハウを注ぎ、30年以上の研究の末にクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功し、2002年6月にその成果を発表。04年9月から、少量ではあるが市場への出荷が始まり、その功績と品質がテレビや雑誌などでたびたび紹介されるようになった。養殖の拠点となる大島実験場は紀伊半島南端に所在し、近海に直径30m×深さ6~10mのいけすを点在させており、この余裕のあるスペースでストレスを抑えてマグロを育てることができるため、抗生物質の投与を必要としない。また、釣り上げ時に電気ショックを与えるため、一本釣り漁で起こりがちな、激しい抵抗による体温上昇がもたらす「身焼け」という見た目や味の劣化がなく、しかも生のまま出荷されるため、鮮度がよい。本来回遊魚として高速で泳ぐマグロをいけすの中で育てれば、運動量が減って、赤身にまで脂が載った「全身トロ」と呼ばれる状態になる。さらに、サバやイカを用いるエサの管理が行き届くため、大きな魚が小さな魚を順次捕食していく食物連鎖のせいで、大きな魚になるほど水銀などの有毒物質が体内にたまってしまう生物濃縮を抑えることにもつながる。価格は天然のクロマグロと比べて半分ほどとなり、東京の三越百貨店日本橋本店や大阪の阪急百貨店うめだ本店などで解体即売会を兼ねて定期的に販売されるほか、一部の飲食店でも扱われている。