人件費や燃料費、設備投資費、営業費などの経費を原価として、これに一定の利潤を適正利潤として上乗せして料金を算出する、公共料金に用いられる料金算定方式。総括原価主義ともいわれる。事業者にとっては事業にかかる費用と利潤の合計が原価となることから、収支の均衡が保証されるメリットがある。半面、事業を効率化してコストを削減するインセンティブが働きにくいというデメリットも指摘される。日本では電気料金やガス料金に総括原価方式が採用されている。最近では、東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償支援のために、東電資産、経営状況などを調査した政府第三者委員会の東京電力に関する経営・財務調査委員会が、2011年10月3日にまとめた報告書で、総括原価方式の見直しを求めたことから注目を集めた。電気料金は電気事業法に基づき総括原価方式で算定される。発電や送電、販売など供給に必要なすべての費用を事前に見積もって総括原価とし、さらに事業報酬と呼ばれる利潤を、総資産額に一定の報酬率をかけて算出して上乗せして電気料金を決定する。報告書では、直近10年間で原価の構成項目の一部で実績値と計算値がかい離し、原価が5926億円過大に見積もられており不適正と指摘し、料金システムの公平性や透明性の検証と見直しが必要とした。