後発発展途上国から経済成長をはたし、1人当たり国民所得が3000~8000ドル(約24万~64万円)の中所得国に達したあと、経済成長が鈍り、格差に対する不満など社会的問題も生じて、経済が停滞すること。後発発展途上国は、人件費の安さなどを武器に、高成長をとげる場合があるが、経済成長にともない、人件費や生産コストも上がっていく。中所得国となってからは、インフラ整備や許認可の簡略化・迅速化などによる外国投資の呼び込みや、統計データの公表や諸手続の公正さといった透明性など、政治面も含め、それまでの経済成長モデルの転換が必要とされる。また、人材育成も重要な課題となる。2011年5月に開催されたアジア開発銀行(ADB)年次総会のセミナーでは、中国、インド、インドネシア、ベトナムが、中所得国のわなにはまり、国際市場で競争力を失う可能性があると指摘された。1人当たり国民所得が7250ドル(約58万円)と、東南アジアではシンガポール、ブルネイに次いで豊かなマレーシアは、中所得国のわなに危機感を抱き、経済政策機関の新設や政策刷新を掲げているが、資金確保や国民の反発など、さまざまな課題に直面している。