2012年3月21日に実質合意した、日本、中国、韓国3国間の投資協定。投資協定とは、協定を結んだ国同士が相手国の企業・投資家の投資をどう保護するかを定めたもので、法的拘束力をもつ。日本は中国に対しては1989年に、韓国に対しては2003年に、すでに2国間の投資協定を発効済み(中韓は07年発効)であったが、中国との古い協定には知的財産権保護の原則が盛り込まれないなど不十分な面が多く、日本は投資協定を日中韓自由貿易協定(日中韓FTA)の前提と位置づけて、3カ国協定の交渉を行っていた。交渉は07年に正式に始まり11年の妥結をめざしたが、中国の消極姿勢などから交渉が遅れていた。今回の協定では、相互の知的財産権保護、外国企業を国内企業と同等に扱う内国民待遇条項の盛り込み、投資規制の強化の禁止、過度な技術移転要求の禁止、国際法に基づいた紛争処理を含む投資家と締約国間の紛争処理手続きの拡充などが盛り込まれた。半面、投資実施の前段階での許認可などでは内外無差別の原則の適用が見送られ、外資規制も対象外となって中国側の独自規制が残るなど、課題も残っている。日中韓投資協定は、日中韓3カ国間の経済分野では初の法的枠組みであり、政治的な意味でも3カ国関係の強化という意義を持つ。交渉の妥結は、日中韓FTA締結に向けての議論に弾みをつけるものと期待される。