労働者派遣法は、職業安定法第44条で禁止されている労働者供給事業(人材派遣事業)を例外的に認める法律で、1985年に制定、86年に施行された。正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」という。長引く景気低迷で派遣労働者の派遣切りなどが社会問題化したため、2010年に鳩山内閣が製造業への派遣や登録型派遣の禁止など厳しい内容を盛り込んだ改正案を国会に提出したが、自由民主党と公明党の反発が強く、継続審議となっていた。12年3月、製造業派遣と登録型派遣の禁止を削除するなど、内容を大幅に緩和した改正案が参議院本会議で賛成多数で可決、成立した。主な内容は次のとおり。(1)雇用期間が30日以内の短期派遣は原則禁止、(2)グループ企業内の人員の派遣は8割以下にする、(3)離職した社員を1年以内に派遣労働者として雇うことを禁止、(4)派遣会社に派遣料の割合(マージン率)などの情報公開を義務づける、など。公布後6カ月以内に施行される。また、法律名は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に変更され、同法の目的にも「派遣労働者の保護・雇用の安定」が明記された。労働者派遣法は1985年の制定当初、派遣できる業務は専門知識を必要とする13の業務(施行後に16業務に拡大)に限っていたが、96年の改正で26業務に拡大、99年の改正では医療や建設、湾港運送、物の製造、警備以外は原則自由化され、2003年の改正では物の製造業務への派遣も解禁となった。改正のたびに派遣労働者の数は増え、厚生労働省の10年度労働者派遣事業報告書によると、派遣労働者数は登録者(過去1年以内に派遣されたことがある人)を含めて約271万人にのぼる。