日本の通貨・円と中国の通貨・人民元を直接交換する為替取引のこと。従来、円と人民元の取引は、円とドル、ドルと人民元というようにドルを介した間接取引が大半で、2011年の日中間の貿易額27兆5400億円のうち、直接取引による決済は1%未満であった。また、為替市場もなく、金融機関により個別に取引されていた。直接取引は、11年12月の日中首脳会談で合意された金融協力の強化の一環として、システムや市場の整備が進められ、12年6月1日に東京外国為替市場と上海外国為替市場で取引がスタートした。人民元のドル以外の先進国通貨との直接取引は初めてとなる。交換レートの決定は東京市場と上海市場とではシステムが異なる。東京市場では取引参加銀行の実際の需給などを基にして算出され、変動幅に制限はない。一方、上海市場では、国内為替取引を仲介する中国外貨取引センターが指定する複数の銀行が示す交換レートの平均値を、センターが中間レートとして毎朝公表し、1日の変動幅は中間レートの上下3%の範囲内に限られる。直接取引の利点として、取引量が大きくなれば、二重にかかる為替手数料などの決済費用の削減、ドルの為替変動リスクの回避が見込めるとされるほか、市場整備によって、円とドルの売買のように市場を通じた自由な取引が可能になり、日中貿易の拡大や円滑化が期待される、などの点が挙げられる。課題としては、中国は管理相場制を採用しているため、必ずしも市場参加者の動向を反映した値動きにはならず、また、資本の流出入にも制限があるなど、人民元の取引や運用に厳しい規制があることで、普及には中国通貨当局の規制緩和が不可欠とされる。12年6月1日の取引開始時、東京外国為替市場では、1元12円33銭の初値をつけ、その後1週間は1元12円台で推移した。取引金額は1日約100億円と、香港でのドルと人民元の交換市場の1割程度の規模にとどまっている。