1935年に創設された、北アメリカの自動車業界を代表する労働組合。ミシガン州のデトロイトに本部を置き、アメリカ、カナダ、プエルトリコに800以上の支部がある。ビッグスリーと呼ばれる、ゼネラル・モーターズ(GM)、クライスラー、フォード・モーターの3社のほか、部品メーカーなどの自動車業界の労働者が組合員の多数を占めており、68年に合流した航空、農業分野の労働者を含めると、2006年時点で51万3000人の現役組合員と57万5000人の退職者が参加する。1970年には、GMに対して67日間にわたる全国規模のストライキを実施するなど、強硬な労使交渉で知られ、高賃金や手厚い医療費補助、一時帰休の間も賃金の8割を保障する「ジョブ・バンク」制度などを獲得してきた。民主党の有力な支持基盤でもあり、日本車の輸入が急増した1980年代には、活発なロビー活動で日本車輸出の自主規制を実現させている。しかし、退職者への医療費補助の負担(レガシーコスト)が、2007年には3社合計で約900億ドルにのぼるなど、ビッグスリーの経営不振の一因は過剰な人件費にあるとして、UAWへの批判は根強い。08年後半に顕在化した世界的な不況から、クライスラー、GMが経営破たんに至った過程では、UAWは「ジョブ・バンク」を中止し、ビッグスリーが負担する医療保険債務の支払い延期や減額に合意したが、賃金や年金は維持された。09年6月に事実上の国有化となったGMについては、再建後のGMの普通株式の17.5%を保有することになった。