中小企業などに融資を行っている金融機関に対して、融資先(借り手)の求めに応じて貸し付け条件を変更するよう努力義務を課す法律。2011年3月末までの時限立法で、09年11月30日に成立し、12月4日に施行された。対象となる借り手には、住宅ローンを利用する個人も含まれる。貸し付け条件の変更とは、一定期間の返済猶予などを指す。条件の変更に応じるかは金融機関が個別に判断するが、銀行は3カ月ごと、信用金庫・信用組合は6カ月ごとに対応状況を金融庁に報告することが義務付けられている。さらに、報告内容は6カ月ごとに公表され、報告に虚偽があれば、個人には1年以下の懲役または300万円以下の罰金が、法人には2億円以下の罰金が科される。また、政府に対しては、中小企業向けの信用保証制度の充実を図るよう求めるほか、この法律の成立に伴って改訂する金融監査指針で、貸し付け条件の変更で生じた金融機関の損失を不良債権に認定しないことなどを定める。この法律は、民主党を中心とする連立政権で金融・郵政担当大臣を務める、亀井静香国民新党代表の発案が具現化したもので、当初は強制的な返済猶予も想定されたことから、金融モラトリアム法とも呼ばれた。08年秋以降の景気後退で資金繰りが悪化した中小企業や、賃金カットなどからローン返済が困難になった住宅購入者の救済が期待される。ただし、条件変更の申し入れによってその後の新規融資に支障が生じるのではないかとして、借り手が申し入れをためらう可能性が指摘されている。