水に関係した事業をまとめたことば。上水、造水(海水淡水化など)、工業用水・工業下水、再利用水、下水など該当する領域は幅広く、事業計画、プラント建設から施設管理、事業運営、あるいは浄化用素材、技術まで、含まれる業態も多岐にわたる。世界の水は97%が海水で、淡水も多くは地下水など利用しにくい形で存在しており、湖水や河川など、人類が利用できる形の淡水は0.01%とされる。今後、開発途上国の工業化、人口増加による世界的な水の需要急増と深刻な水資源の不足が予測され、こうした問題に対応する水関連インフラの整備をビジネスとしてとらえる考え方が広がったことから、「水ビジネス」ということばが普及した。世界の水ビジネス市場は有力な成長分野として注目される。産業競争力懇談会の2008年3月報告書では05年の約60兆円規模から25年は約100兆円に、経済産業省水ビジネス国際展開研究会の10年4月の報告書では07年の約36兆円から25年は86.5兆円に成長する、との予測が出された。なかでも、上下水道の整備・運営管理にかかわる市場規模が大きく、設備製造から上下水道の整備・運営を一貫して運営する体制をもつ水メジャー、ウォーターメジャーとよばれる、フランスのべオリア、スエズなどの大企業に加えて、シンガポールや韓国などが参入して、世界的な競争が激化しつつある。日本は、水道事業運営を地方自治体が担ってきたために、民間企業は包括運営能力が弱点とされてきた。しかし、先の水ビジネス国際展開研究会報告書では、地方自治体と企業の連携への政府支援を提言したほか、10年版環境白書では「水ビジネス」に初めて1章を設け、日本の上水等の技術力の優位性をあげて、官民が連携した積極的な海外市場参入を提言するなど、日本の成長戦略の一環として、水ビジネスを重視する姿勢を鮮明にしている。