イタリアの高級スポーツカーメーカーのフェラーリが開発した、同社初の4輪駆動モデル。4シーターフェラーリとしては2004年に発表された612スカリエッティの後継となる。11年3月のジュネーブオートサロン(ジュネーブモーターショー)で正式発表され、日本でも7月5日に初公開された。FFは、スポーツカーとしての高い動力性能とスポーツ性能をもちながら、長距離クルーズを快適に楽しむGT(グランツーリスモ)として、大人4人が乗れる高い実用性とユーティリティー性も兼ね備えるモデルとして開発された。デザインは、これまでのほとんどの市販フェラーリをてがけてきたピニンファリーナによるもので、クーペボディーのルーフをリア部分まで伸ばしリアハッチゲートを加えた、シューティングブレーク(ハンティング仕様の高級ワゴン)風の個性的スタイルが特徴。キャビンは大人4人がゆったり座れるスペースが確保され、トランク容量も450リットル、リアシートをたためば、最大800リットルまで拡大でき、フェラーリではクラス最高の容量を確保したとしている。搭載されるエンジンは総排気量6262ccの直噴65度V型12気筒エンジンで、最高出力は485kW(660ps)/8000rpm、最大トルクは683Nm(69.6kgm)/6000rpmを発揮、7段F1デュアルクラッチギアボックスが組み合わされる。4輪駆動システムは、通常は後輪駆動だが後輪のスリップを検知すると路面状況に応じて前輪に必要な駆動力を配分する独自の4RMシステムで、雪道からサーキットまで路面状況に応じた安定した走りを実現している。また、重量物のエンジンとギアボックスを別々にして、フロントにエンジン、リアにギアボックスを置くトランスアクスル・レイアウトを採用することで、フロント側の重量配分バランスが大きくなるFR(フロントエンジン・リアドライブ)方式にもかかわらず、47対53という、スポーツカーに必要な良好な前後重量バランスを実現した。ボディーサイズは全長×全幅×全高が4907×1953×1379ミリ、車両総重量1880キログラム。動力性能は0~100キロメートル加速が3.7秒、最高速度は時速335キロメートルと公表されている。また、アイドリングストップ機構などを組み込んだエンジン制御システムHELEシステム(ハイエモーション/ローエミッションシステム)など、環境性能にも配慮がなされ、ヨーロッパ複合燃費基準で燃費性能15.4リットル/100キロメートル(6.5キロメートル/リットル)、二酸化炭素排出量は360グラム/キロメートルと、従来モデルより大きく進歩した。なお、日本仕様はHELEシステム、日本語カーナビを標準装備し、価格は3200万円。車両引き渡しは11年秋以降となる。