2009年末に発覚したギリシャ危機に端を発してヨーロッパ中に広がった金融・債務危機に対して、11年10月26~27日にEU(欧州連合)が首脳会議で合意した危機対策。包括政策、包括策(comprehensive plan)とも呼ばれる。ギリシャ債務の大幅な削減、欧州金融安定基金(EFSF)の規模拡大、域内銀行の資本増強が主要な柱で、これまでの危機対策では最大規模となる。ギリシャ債務の削減では、11年7月のギリシャ向け第2次金融支援で決定した、ギリシャ国債による民間が被る損失負担を21%から50%に引き上げることで合意。EFSFの規模を拡大する方策では、融資限度額は4400億ユーロのままだが、イタリアやスペインなどの国債を購入する民間投資家の損失を一部穴埋めする債務保証方式と、IMF(国際通貨基金)や民間投資家などの資金拠出でEFSFが特別目的会社を設立、そこに投資資金を呼び込む特別目的会社方式との2つのレバレッジ手法を使い、実質資金供給規模を1兆ユーロに拡大する。域内銀行の資本増強では、銀行の保有する国債や貸出債権を11年9月時点の時価で評価した上で、狭義の中核的自己資本比率9%の達成を要請する。当局の暫定試算では1060億ユーロの資本増強が必要と計算されている。これらの対策は、ギリシャ再生の道筋を明確化するとともに、南欧を中心とする国債価格の下落を防ぎ、さらに金融システム危機の連鎖に歯止めをかけるねらいがある。ただし、民間が債務の削減にどの程度参加するのか、基金に資金が集まるかなど、課題は多い。