金融システムの立て直しを目的とするアメリカの法律で2008年10月3日成立。過去最大規模となる公的資金7000億ドルを投入し、金融機関から不良資産を買い取ることを柱とする。おもなポイントは、(1)買い取り資金は7000億ドル、うち当初枠は2500億ドルで、大統領判断で1000億ドルを追加、残り3500億ドルは議会承認が必要、(2)政府は制度を利用する金融機関の株式引受権を取得、対象金融機関の株価上昇で公的資金の損失を補える仕組みを設定、(3)5年後時点で政府が損失を被った場合、金融機関に補填(ほてん)を要求できる、(4)対象金融機関の経営陣の報酬を制限、(5)買い取り業務監視のために金融安定化監視委員会を設置、(6)金融機関への時価会計適用を一時停止する権限をSEC(アメリカ証券取引委員会)に付与、(7)金融機関の負担による保険制度を創設、など。法案は税金によるウォール街救済だとする国民の反発により、08年9月29日、下院議会で否決された。しかし、金融市場の急速な不安定化を背景に、預金保護上限額を10万ドルから25万ドルに引き上げるなどの預金者保護策と、10年間総額1100億ドルの個人・企業向け減税策、代替エネルギー促進のための税優遇策などを盛り込んだ修正案が作成され、10月1日に上院議会で可決、10月3日に下院議会でも可決され、大統領が即日署名して成立した。その後、公的資金注入が不可避との判断が強まり、10月14日、政府は同法の枠組みを活用、金融機関に2500億ドルを資本注入する総合的な金融安定化策を発表した。