2009年3月施行の改正雇用保険法で新設された、離職理由による離職者の区分。該当するのは、(1)派遣労働など期間を定めた雇用契約が更新されない雇い止めで離職した人と、(2)自己都合の離職だが正当な理由がある人。(1)は、新たな契約更新を期待できる状況だったことが条件で、(2)の「正当な理由」には、通勤の困難や、家族の看護などがあてはまる。特定理由離職者に認定されると、雇用保険の失業給付を受けるために、通常は被保険者期間が離職日以前の2年間で通算12カ月以上必要なところ、1年間で6カ月以上に緩和される。これにより、短期間の労働契約を繰り返す人も受給資格を得やすくなることが期待される。また、労働者の離職の理由は、被保険者であった期間や年齢とともに、失業給付の受給期間などに大きく影響する。例えば受給期間の上限は、労働者に責任のない解雇や倒産などの会社都合で離職した特定受給資格者の330日に対して、自己都合での離職は150日だった。今改正で新設の特定理由離職者は、特定受給資格者と同じ条件で給付を得ることができる。08年後半以降の景気後退のため、企業が人員整理を図る動きがある一方で、会社都合の離職者が多い企業は国からの雇用維持に関する助成金を受けられないなど、企業側には会社都合の離職を少なくしたい事情がある。そのため、通勤困難な地域への転勤や、出産や育児に配慮しない勤務を強いるなど暗に離職を迫り、書類上は自己都合の離職とされるケースがあり、問題視されている。特定理由離職者の新設で、こうした実質的な会社都合の離職者が救済されるが、認定を行うハローワークは企業側と離職者の双方の主張に基づいて審査するとしており、実際の事情が十分に考慮されるかといった懸念が残る。特定理由離職者の給付認定は、12年度末までの時限措置。