IT(情報技術)を活用して電力の過不足を調整する次世代送電網、スマートグリッドの発展形として、東京大学大学院工学系研究科の阿部力也特任教授が発案した分散型電源システム。電力会社の送電網に負担をかけない点がスマートグリッドと異なる。デジタルグリッドは、太陽光や風力などの発電設備と蓄電池、電力を流したり止めたりする中継装置(ルーター)から構成され、家庭や工場などが互いに電力使用状況の情報を交換しながら、電力を融通しあえるようにする。電力会社の送電網を幹とすると、デジタルグリッドはそれにつながる葉の部分にあたり、数十~数百世帯が一つの単位(セル)となる。セル同士をつないで一体運用することも可能。太陽光や風力発電は出力が不安定であるため、スマートグリッドに組み入れるには、調整電源や送電設備の増強に膨大な投資が必要とされる。これに対しデジタルグリッドは、出力変動をセル内で吸収するため、電力会社の送電網に負担がかからない。阿部教授らは2011年9月、デジタルグリッドの開発と普及を図る非営利の一般社団法人「デジタルグリッドコンソーシアム」(dGridコンソーシアム)を設立し、同年12月に日本電気(NEC)、日本ナショナルインスツルメンツ、オリックスの3社と共同で、共通仕様の策定に向けて活動を開始した。国内外で3年後に10万キロワット、5年後に70万キロワットの利用を目指すとしている。デジタルグリッドという名称は、阿部教授が商標登録している。