大型クジラの生息数や生態についての科学的な調査を目的とした捕鯨(鯨類捕獲調査)。国際捕鯨取締条約により、加盟国の権利として実施が認められている。同条約の加盟国による国際捕鯨委員会(IWC International Whaling Commission)が1982年に決議した、大型クジラの商業捕鯨のモラトリアム(一時禁止)を契機に始まった。日本鯨類研究所による日本の調査捕鯨は、87年から南極海で始まり、94年には三陸沖などの日本沿岸を含む北西太平洋が対象に加わっている。南極海の2005/06~10/11年の第2期調査は、ミンククジラ、ザトウクジラ、ナガスクジラの3種を対象とし、捕獲頭数の上限はそれぞれ850頭、50頭、50頭。世界では調査捕鯨以外に、(1)IWCが先住民族に認めている先住民生存捕鯨、(2)モラトリアムに反対するノルウェー、アイスランドによる商業捕鯨、(3)IWC非加盟国による捕鯨があるが、公海上で捕鯨を行っているのは日本のみで、捕獲頭数も最も多い。また、日本が行う捕殺調査と、調査後の鯨肉の販売について、反捕鯨国から「目視のみで調査は可能」「実質的な商業捕鯨」との批判がある。これに対して日本政府は、(1)クジラの年齢測定や胃の内容物の調査などのため捕殺調査は不可欠、(2)販売は調査費用調達のためで、国際捕鯨取締条約は調査後のクジラの完全な有効利用を定めている、と反論している。反捕鯨国からは、調査捕鯨そのものの中止を求める声も高まっているが、1982年のモラトリアム導入の際、反捕鯨国はその理由として、クジラの頭数、生態についてのデータ不足をあげていたため、データ収集をかかげる調査捕鯨の中止はモラトリアムの根拠を揺るがすことになり、双方の主張がかみ合わない一因となっている。2010年2月、IWCは現行の調査捕鯨の10年間の停止と引き換えに、南半球と沿岸での捕鯨を認める議長提案をまとめた。IWCによる捕獲頭数の制限を前提としているものの、商業捕鯨の再開につながるものとして、同年6月開催予定のIWCの年次総会に向けた動向が注目されている。