IMF(国際通貨基金)が創設した新興国向けの緊急融資制度。2009年3月24日のIMF理事会で承認された。制度は、経済運営が比較的健全な新興国などを対象に、金融危機の影響で一時的な資金不足に陥ったり、陥る恐れがある国への支援を実施することで、新興国への危機の波及を未然に防止する。IMFの通常の融資は、経済運営で問題を抱えた国を対象に、金融や財政改革などの厳しい融資条件をもとに融資を実行してきたが、FCLでは、条件を大幅に緩和するとともに、手続きも簡素化し、必要な資金を迅速に調達できるようにしている。同様の制度として、IMFは08年10月29日に短期流動性融資制度(SLF)を創設したが、その後の利用実績がなかったために、内容を見直したうえでSLFを廃止、FCLを創設した。SLFでは融資額の上限はIMFへの出資金の最大5倍で、融資返済期間は3カ月、最長でも1年だったのに対して、FCLでは融資上限はなく、返済期間も3年3カ月~5年としたほか、直接の融資実行に加えて、危機に備えた融資枠の設定にも使えるようにして、危機への予防性も持たせた点が異なる。09年4月1日には、メキシコが、急激な資金流出が起きた場合に最大で470億ドルの緊急融資を受ける内容で、同制度初となる制度適用を申請した。