親会社の株主が、子会社の役員の責任を直接追及できる株主代表訴訟制度。多重株主代表訴訟ともよばれる。子会社の役員が自社に損害を与えたと判断される場合に、子会社の株主である親会社に代わり、親会社の株主が訴訟を起こすことが可能となる。2012年8月1日、法務省法制審議会の会社法制部会は、企業統治の強化を目的とする会社法の改正要綱案を決定、その柱の一つとして、多重代表訴訟制度の創設が盛り込まれた。持ち株会社形態による企業経営の広まりを背景に、親会社の業績に影響を与える子会社の事業活動への監視を強化することで、親会社の株主の利益を保護するとともに、子会社の経営の透明性や信頼性を高めることをねらいとする。経団連など経済界は、乱訴を招くとして制度の創設に強く反対したが、訴訟対象を制限することで受け入れを決めた。要綱案では、制度の乱用を避けるため、訴訟を起こせる株主を、6カ月前から1%以上の親会社の発行済み株式を保有する株主に制限し、訴訟先子会社も親会社が保有する子会社株式の帳簿価格が、親会社総資産の5分の1を超える会社に限定した。法務省は8月中に最終案をまとめ、9月には法務相に要綱を答申、12年秋の臨時国会に提出をめざす。