2010年6月3日に経済産業省が発表した、日本の産業政策の指針となる成長戦略。産業構造審議会産業競争力部会の報告書としてまとめられた。ビジョンは、市場の変化に乗り遅れ、高い技術をもった製品がシェアを失い事業的に劣勢にたたされるという日本産業の厳しい現状を直視、課題を徹底的に分析した上でこの行き詰まり状況を打破し、再び日本経済を成長軌道に乗せるための「国を挙げた産業のグローバル競争力強化」の必要性を訴えた。そのための課題として、政府・民間を通じた「4つの転換」が、日本の産業に必要不可欠としている。転換の第1は「産業構造の転換」で、自動車産業、電機産業依存からの脱却と、日本の隠れた強みをビジネスにつなげる「新・産業構造」の構築を提言している。成長が期待できる原子力発電、鉄道などのインフラ輸出、次世代自動車などの環境・エネルギー産業、医療・介護・健康・子育てサービス、ファッションやコンテンツなどの文化、ロボット、宇宙などの先端産業を、市場を創出して稼ぐ戦略5分野に指定し、予算の重点配分や集中的な取り組みを求めた。この5分野で20年には149兆円の市場と、257万9000人の雇用の創出が可能としている。転換の第2は「企業のビジネスモデルの転換」で、技術の優位性を維持しながら事業でも優位にたつために、グローバルスタンダードの獲得や、世界市場を見据えた企業再編、競争政策を訴えている。転換の第3は「グローバル化と国内雇用の関係についての発想の転換」で、グローバル化か国内雇用かという二者択一の発想をやめ、積極的グローバル化と世界水準のビジネスインフラの強化によって国内雇用を創出するとの考えを表明した。国内立地での競争力を強化する施策では、法人実効税率を現在の約40%から中長期には国際水準の25~30%に大幅に引き下げるなど、具体的数値も織り込まれた。転換の第4は「政府の役割の転換」で、国際競争における官民の連携を強め、インフラ輸出での民間企業支援を強化することなどがあげられた。経済産業省は、産業構造ビジョン2010を、政府が10年6月にまとめる新成長戦略の柱にしたいとしている。