2011年10月10日、スウェーデン王立科学アカデミーは同年のノーベル経済学賞を「マクロ経済における原因と結果の実証的研究」を理由として、アメリカ国籍のトーマス・サージェント(Thomas J. Sargent アメリカのニューヨーク大学教授)博士、アメリカ国籍のクリストファー・シムズ(Christopher A. Sims アメリカのプリンストン大学教授)博士の2人に贈呈すると発表した。企業や個人などの「期待」に注目して、中央銀行や政府の経済政策が与える影響を評価する手法の確立と発展についての業績が認められての授賞。サージェント教授は、1970年代、中央銀行が通貨の発行量を増やせば景気が上向くとされていた従来の理論に対し、家計や企業は景気の好転を織り込んで事前に商品価格などを上げたりするため物価も上がり、通貨発行効果は相殺されるとした「合理的期待理論(合理的期待形成理論)」を主張した。シムズ教授は、データの分析で理論を発展させ、「ベクトル自己回帰分析(VAR分析)」を取り入れた経済効果予測の分析手法を提案した。現在、その理論と手法は政府や中央銀行の経済分析に使われている。賞金1000万クローナ(約1億1000万円)は2等分される。なお、ノーベル経済学賞は、正式にはアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞とよばれ、1968年にスウェーデン国立銀行が設立300周年の一環として、ノーベル財団に働きかけて設立された。ノーベル物理学賞、化学賞と同じく、スウェーデン王立科学アカデミーが選考する。