2012年2月14日の日本銀行政策委員会・金融政策決定会合で新設した、金融政策が目標とする消費者物価水準の名称。日本銀行(日銀)は、「中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率」として、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス領域にあると判断し、当面は1%をめどとする」ことを明示した。また、この目標が達成されるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買い入れ等の措置で強力に金融緩和を継続するとしている。これまでは、日銀は、各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を「中長期的な物価安定の理解」として「2%以下のプラスで中心値は1%程度」との数字を公表してきた。しかし、数字が目安か目標か、判断の主体などが、あいまいでわかりにくいとの批判があり、今回導入した目標では、日銀の判断として1%を目標にすることをはっきり示した。この決定は、日銀が事実上のインフレ目標を金融政策に導入したと受け止められた。インフレ目標とは、物価がどれだけ上昇するべきかという目標を示し、その達成に努力する政策のことで、本来はインフレの進みすぎを抑制するために導入されていた。しかし、金融政策の透明性を確保するために、目標とする物価上昇率を明示する例が増え、世界20カ国以上で採用されている。ただし、今回、日銀が導入したインフレ目標の英語訳は「ゴール」があてられ、「ターゲット」ではない。ターゲット(インフレターゲット)の場合は、一定期間内の目標達成を義務づけ、未達成の際の責任を明示するなど、厳格な枠組みが設けられるのに対して、ゴールは達成の期間、未達成の際の対応などが示されない、といった違いがある。なお、「中長期的な物価安定の目途」について、日銀は原則として今後1年ごとに見直しを行うとしている。