検察庁が不起訴処分にした被疑者を、検察審査会が「起訴して裁判にかけるべきだ」と判断したときに、裁判所が検察官役として指定する弁護士を指定弁護士という。検察審査会がこのような「起訴議決」の判断をした場合、指定弁護士は必ず被疑者を起訴しなければいけないので、これを「強制起訴」と呼んでいる。指定弁護士は、起訴状を作成したり、公判で立証したりするなど、検察官の権限を行使する。通常の裁判では検察官と弁護士の対立となるが、強制起訴による裁判では指定弁護士と弁護士が対立することになる。この制度は、2009年5月に施行された改正検察審査会法に基づくもので、検察審査会は01年7月に兵庫県明石市で11人が死亡、247人が負傷した歩道橋事故の審査で、同法の施行後初めて起訴議決の判断を下し、指定弁護士が10年4月20日に元明石署副署長を業務上過失致死傷罪で強制起訴した。また同月23日には、05年4月に107人が死亡したJR宝塚線(福知山線)脱線事故でも、同様に指定弁護士がJR西日本の歴代社長3人を業務上過失致死傷罪で強制起訴した。