2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故で各地に避難している原発周辺自治体の住民が、他の自治体に集団で移住する構想。避難者の分散を避け、地域コミュニティーを維持するのが目的。構想を打ち出しているのは、町の全域が警戒区域か計画的避難区域に指定されている福島県大熊町、双葉町、富岡町、浪江町の4町で、人口は合計約5万人。12年7月13日に閣議決定された復興庁の「福島復興再生基本方針」でも、「町外コミュニティー」という名前で、必要な措置を講じるとしている。具体的な姿は決まっていないが、役場や復興住宅(災害公営住宅)などを1カ所に集めた集約型(ニュータウン型)と、受け入れ自治体の事情に合わせて複数の移転先をつくる分散型が議論されている。ただし、自治体ごと他の自治体へ移転するというケースは地方自治法の想定外であり、税収の扱いや用地の確保、医療やごみ処理といった行政サービスの維持など解決すべき課題は多い。12年9月22日には、復興庁と福島県のほか、避難する側の自治体と受け入れ側の自治体が参加して「仮の町」構想などを検討する、「長期避難者等の生活拠点の検討のための協議会」が発足した。