戦争によって損失した著作権保護期間を、各国が定める通常の期間に加算する制度。第一次世界大戦(1914~18年)後、著作者の利益回復のため、フランス、ベルギー、ハンガリーなどが、それぞれの国内法で初めて規定した。第二次世界大戦(1939~45年)後の51年、日本と連合国諸国の間で締結されたサンフランシスコ平和条約では、戦勝国である旧連合国および連合国民が戦前・戦中に取得した著作権に対し、日本が片務的に戦時加算義務を負うことが規定された(第15条)。対象となるのは、(1)参戦前日の41年12月7日までに取得されていた著作権、(2)参戦日~平和条約の発効前日までに取得された著作権。従って、日本では通常の保護期間を著作者の死後50年間と定めているが、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、ブラジル、オランダ、ノルウェー、ベルギー、南アフリカ、ギリシャなど、平和条約を批准した旧連合国の作品については、約10年間の延長を行っている。しかし、同じ敗戦国のイタリアは戦時加算を双務的義務として負い、ドイツは平和条約締結を行わなかったため実質的に回避している。そのため不平等を唱える声が国内にあり、日本音楽著作権協会(JASRAC)は、13年2月25日、旧連合国15カ国に個別交渉し、権利の行使を停止させるよう日本政府に要請した。