2012年7月23日、東京電力福島第一原子力発電所事故に関して、政府の事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東京大学名誉教授)が発表した最終報告書。11年12月発表の「中間報告」を踏まえ、新たに判明した事実を中心にまとめたもので、本文と資料の計826ページからなる。最終報告書では、事故は自然災害に起因するものの、被害が深刻化した背景には東電や原子力安全・保安院等の事故防止策が不十分だったこと、大規模な複合災害への準備不足、事故発生後の現場対処の不手際、政府の危機管理体制の問題点などがあったと指摘。一方、地震により原子炉圧力容器等が損傷した可能性については否定するなど、国会事故調がまとめた最終報告書とは見解の異なる部分も見られた。また、今回のように甚大な被害をもたらす事故に対しては、発生確率がたとえ低くても、しかるべき安全対策・防災対策を取るという「新たな防災思想」が必要だとし、電力事業者や規制当局は「被害者の視点」でリスク要因を洗い出すべきと提言。東電や関係機関が事実解明を継続し、情報開示に取り組むことは「我が国の責務」とした。報告書の全文は同委員会ホームページ(http://icanps.go.jp/)より閲覧可能。本報告書によって国会、民間、東電と、設立母体の異なる4つの事故調査委員会報告書がそろったことになる。