国土交通省が滋賀県大津市に建設を検討しているダム。利水、治水、発電の多目的ダムとして、1968年に予備計画調査を開始し、89年に国の直轄事業として採択された。大戸川(だいどがわ)は、三重県と滋賀県の県境にある高旗山を水源とする淀川水系の一級河川で、予定される総事業費約1080億円のうち、約380億円は淀川水系にかかわる自治体が負担する。98年にはダム完成後に水没する大鳥居地区の移転が完了。翌99年には準備工事として県道の移設を着工している。しかし、97年の河川法改正で、専門家や市民の意見を河川整備に反映させる仕組みが導入されたことから、国交省は2001年に工事を中止して淀川水系流域委員会を設置。03年に同委員会は、水需要の減少や生態系の保護などを理由に、大戸川ダムを含む5カ所のダム建設の原則中止、縮小を提言した。国交省も凍結を表明したが、07年に一転、治水専用ダムとして建設方針を示したことから、08年に大阪、滋賀、京都、三重の4府県知事が、異例の共同見解で建設中止を求めるなど、批判が高まっていた。同委員会や知事らは、淀川流域の治水対策の必要性は認め、河川の改修などで対応を図るとしている。09年3月、国交省は淀川水系河川整備計画に「本体工事は当面実施しない」と明記。約4割が完成している県道の移設工事は、ダム建設の予算で継続するとした。