警察官、検察官、刑務官らが、被疑者、被告人、受刑者らに「暴行または陵辱もしくは加虐の行為」をした場合に適用される罪(刑法第195条)。これらの公務員は、職務上強い権限を持つため、同罪では、職権乱用の防止を図る意味で、通常の暴行罪(2年以下の懲役または罰金30万円以下)より重い、7年以下の懲役または禁固を規定している。2003年の鹿児島県議会選挙をめぐる冤罪事件(志布志事件)では、無実の男性に親族の名前を記した紙を踏ませたとして、鹿児島県警察の元警部補が同罪で起訴された。07年11月の初公判で、被告側は“踏み字”の強制を認めた上で、時効を迎えている公務員職権乱用罪が適当として、無罪を主張し、“踏み字”が、特別公務員暴行陵虐罪の「陵辱、加虐」に当たるかが争点となった。公務員職権乱用罪(刑法第193条)は、公務員が職権を乱用して義務のない行為を強制したり、権利の行使を妨害したりした場合に適用され、2年以下の懲役または禁固が科される。従来、特別公務員暴行陵虐罪では、被告人に性的行為を行った警察官や、実弾入りの拳銃を被疑者に突きつけた警察官などが起訴、有罪判決が下されている。