2010年9月7日午前に、沖縄県の尖閣諸島久場島から北北西約12キロの海上で、中国漁船が海上保安庁(海保)第11管区海上保安本部の巡視船「よなくに」、「みずき」らに衝突した事件の様子を海保が現場で撮影し録画したビデオ映像。海保は、日本国内の領海で違法操業を行う中国漁船に立ち退きを求めたが、退去に応じず巡視船に意図的に衝突を繰り返したことから中国漁船の船長を公務執行妨害容疑で逮捕した。ビデオは当初、海保による一連の処置が適切であったことを国民に周知するため、10月18日、一度は一般非公開で国会に提出する方針が決定し、11月1日に衆議院予算委員会の委員長や理事らの限られた国会議員に、約7分弱に編集された2つのシーンのみが極秘公開された。ところが、11月4日午後4時過ぎに、一般国民に非公開とされたはずの尖閣ビデオは何者かの手により、6つのファイル合計44分のビデオ映像として、動画の投稿サイトのYouTube(ユーチューブ)上に、「sengoku38」のアカウント名(ハンドルネーム)でアップロードされる。削除される5日の朝までに半日近くにわたって膨大なアクセスが集中したばかりか、オリジナルファイルが削除された後も、タイトルを変えたコピーが増殖をしたことから、政府の意図とは異なり事実上「公開」状態となった。IPアドレスなどの追跡により、神戸のインターネットカフェのパソコンから送信されたことが確認され、10日に第5管区海上保安本部の男性海上保安官が、ビデオ映像を意図的に流出させたことを認めた。ネット社会においては、情報の隠蔽や秘匿が困難であり、政策上には重要であっても、必ずしも非公開・秘匿扱いがなじまなくなりつつあるとする意見もある。