群馬県長野原町で利根川水系吾妻川に建設が進められてきた多目的ダム。2015年度完成予定で、高さ116m、総貯水容量1億750万立方メートル。全体事業費は、ダム建設事業費としては最高額の4600億円。1000人以上が死亡する被害を出した1947年のカスリーン台風をきっかけとして、下流部の洪水被害を軽減することを目的に構想が始まった。一度中断されたが、60年代に調査を再開。高度経済成長のなかで首都圏の人口が急増し、深刻な水不足も生じていたことから、水源開発も目的に加えられ、70年に建設が開始された。水没予定地には、800年の歴史をもつ川原湯温泉などもあり、多くの水没地住民が反対したが、長びく反対運動に疲れ、80年代には条件付き賛成へと転換していった。しかしその後、首都圏の水需要の状況は改善されており、もはや建設の必要はないとする声も多い。2009年9月3日、国土交通省は11日から予定されていた八ツ場ダム本体工事の入札を延期すると発表。新政権が発足した翌日の17日、鳩山由紀夫首相と前原誠司国土交通相は、八ツ場ダムの建設中止を相次いで明言した。民主党は、09年8月の衆議院総選挙のマニフェストで、公共事業の全面的な見直しの一環として、熊本県の川辺川ダムとともに八ツ場ダムの中止を掲げていた。