正式名称は「いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会報告書」。2010年3月9日、日米間の過去の密約について調査・検証してきた有識者委員会(座長・北岡伸一東京大学教授)が、岡田克也外相に検証結果をまとめて提出したもの。同委員会は、09年11月27日に、以下の4つの「密約」について、その存否・内容の検証を岡田外相より委任されていた。(1)米軍の核兵器搭載艦の日本寄港・領海通過を事前協議の対象外とする密約(1960年の安保条約改定時)、(2)朝鮮半島有事の際に在日米軍の戦闘作戦行動について事前協議を免除する密約(同上)、(3)有事における沖縄への核の再持ち込み(72年の沖縄返還時)、(4)アメリカが負担すべき原状回復費用の肩代わり(同上)である。報告書は、文書があるものを「狭義の密約」、ないものを「広義の密約」として、(2)について「狭義の密約」の存在を認め、(1)(4)については「広義の密約」とした。しかし(3)については、当時の佐藤栄作首相とニクソン大統領の署名入り合意議事録が09年に発見されたが、次の内閣には引き継がれなかったとして「必ずしも密約とはいえない」とした。報告書はまた、当然あるべき文書類の「不自然な欠落」があったとして、外務省で「歴史的に重要な文書の不用意な廃棄や不適切な処理が行われていた」ことを指摘している。