国家間の投資協定や貿易協定などにおける取り決めの一つ。企業や投資家が協定相手国の政策で損害を被った場合、相手国に対する損害賠償を投資紛争解決国際センター(ICSID)などの国際仲裁機関に訴えることができるというもの。直訳すると「投資家対国家の紛争解決」条項。ISDS条項とも言う。自国以外の企業を不当に差別し、経済活動を妨げるのを減らすのが狙いで、日本がこれまで各国と結んできた多くの投資協定や経済連携協定(EPA)でも盛り込まれている条項である。一方、2011年11月に日本政府が交渉参加の方針を表明した環太平洋経済連携協定(TPP)において、同条項が盛り込まれた場合の危険性を指摘する論者もいる。アメリカ、カナダ、メキシコで結ぶ北米自由貿易協定(NAFTA)では、ISD条項に基づきアメリカ企業がメキシコ政府を提訴し、メキシコ政府側が約1670万ドルの賠償を命じられた例や、水輸出に絡んでアメリカ企業がカナダ政府に105億ドルもの賠償を求めた例などがあるためだ。なお、アメリカとの自由貿易協定(FTA)を結んだ韓国では、同条項が同国にとって不利益な「毒素条項」だとして批准をめぐる国会審議が紛糾。また、オーストラリアはアメリカとのEPAで同条項の導入を拒否するなど、各国の対応は割れている。