アメリカのオバマ政権が推進する医療保険改革。主な内容は、(1)新たな公的医療保険の創設、(2)医療費の抑制、(3)財源確保のための富裕層への増税など。国民の多くが個人契約や勤務先を通じて民間保険に加入しているアメリカでは、公的医療保険は高齢者向けの「メディケア」と貧困者向けの「メディケイド」のみで、国民のすべてが対象の国民皆保険制度はない。このため、貧困者とは認定されないが、高額な民間の保険料も支払えない無保険者は、2007年に約4600万人と国民の15%に上り、その対応は長年の課題とされてきた。さらに、アメリカの医療費は国民1人当たりではOECD(経済協力開発機構)加盟国平均の2.4倍と突出しており、とくに「メディケア」は、医療費の増大で17年に破たんするとの見通しが示されるなど、改革が急務となっている。これらの要因として、一部の巨大資本が保険市場を独占していることが指摘されており、オバマ政権は、実質的な国民皆保険制度を実現する新たな公的医療保険の創設と、診療報酬の見直しなどで、保険料と医療費を抑制できると説明する。09年7月には、下院のエネルギー・商業委員会でオバマケアの下院案が可決。関連法案の09年中の成立を目指すとしているが、野党の共和党や業界団体が強硬に反対しているほか、与党の民主党からも10年間で総額1兆ドルを要する財政負担を問題視する声があがるなど、法案の成否は不透明となっている。同年8月にメディアが実施した世論調査では、オバマケアを支持しない国民が過半数に達するとの結果が示され、オバマ政権自体への支持も左右しかねないとして、審議の行方が注目されている。