アメリカの医療保険制度を改革し、国民皆保険に近づけるための法律。2010年3月23日、大統領の署名により成立した。3月30日には修正案にも署名。アメリカは皆保険制度をもたない唯一の先進国とされてきたが、改革法の成立によって、オバマ大統領が公約とした皆保険制度が事実上導入されることになった。日本では医療保険制度改革法ともよばれる。医療保険改革法のおもな内容は以下の通り。(1)ほぼ全国民に医療保険加入を義務化、未加入者には罰金を科す。(2)2008年時点で4600万人だった無保険者を3200万人減らし、保険加入率を現在の83%から今後10年間で95%まで引き上げる。(3)10年間で政府は総費用9400億ドルを投じるとともに、財政赤字拡大懸念に対しては高齢者向けのメディケア、低所得者向けメディケイドなど政府提供の医療保険を効率化して医療費の伸びを抑制、財政赤字を1380億ドル削減し、財政負担拡大に対応する。(4)高額医療保険への課税、年収25万ドルを超える高所得層への増税で財源を確保する。(5)低所得層の無保険者に補助金を支給する。(6)既往症を理由とした保険加入拒否の禁止、不合理な保険料設定の禁止など、民間保険会社への規制を強化する。(7)州ごとの運用で独占・寡占状態にある民間保険会社に対し、保険取引市場を開設して参入を促進、競争原理を導入する。(8)公的医療保険制度の創設は見送る。20世紀初頭のセオドア・ルーズベルト以来、国民皆保険を目的とする医療制度改革は、ケネディ、クリントンら歴代大統領が試みては失敗に終わってきた。政府の肥大化への警戒、自己責任を重んじ、民間への政府介入を嫌う国民性などが理由とされる。今回の法案も成立前の世論調査は賛否が伯仲し、21日の下院本会議の採決も賛成219対反対212と、小差の可決となった。