2010年10月15日に貫通した、スイスアルプスのエルストフェルト~ボディオ間を南北に縦断する世界最長鉄道トンネル。全長は約57キロで、これまで世界最長だった青函トンネルの53.85キロを上回る。既存のルートにあるゴッタルドトンネルと区別するために、ゴッタルドベーストンネル(ゴッタルド基底トンネル)とよばれる。ベーストンネルの名前はアルプス山脈のベース部(基底部)を通ることに由来する。1999年に掘削作業が開始されたトンネルは、並行した2つの単線チューブと一定区間ごとに双方をつなぐ連絡路からなり、アルプトランジット・ゴッタルド社が建設と運営を担う。総工費は約100億スイスフラン(約8500億円)。トンネルの特徴は、スイスの首都ベルンの標高550メートルより低い地点を平坦で直線的に敷設されていることで、そのため、急傾斜やカーブが続く従来ルートより距離が短縮されるとともに、高速化や積載量の増加が可能になり、たとえばチューリヒ~ミラノの運行時間は約1時間半短縮され、貨物車の積載量も2000トンから4000トンに引き上げることも可能とされる。トンネルの完成と開通は2016~17年の予定。なお、ゴッタルドトンネルは、1992年に国民投票で承認されたアルプス縦断鉄道(NEAT/NLFA/NRLA)プロジェクトの一翼を担うもの。アルプス縦断鉄道はスイスの南北を縦貫する鉄道交通を効率化し、旅客の乗車時間短縮とトラックによる貨物輸送の鉄道輸送への切り替えを目標とする計画で、ゴッタルドトンネルと2007年開通のレッチュベルクトンネル(レッチュベルクベーストンネル 全長34.6キロ)、それらをつなぐ線路などからなっている。