アメリカ軍の制服組のトップとして基本的戦略の調整を行う統合参謀本部議長が策定する、アメリカ軍の運用指針。アメリカ大統領が策定する包括的な安全保障政策の指針である「国家安全保障戦略(NSS ; National Security Strategy)」や、国防長官が策定する「4年ごとの国防計画見直し(QDR ; Quadrennial Defense Review)などを踏まえて策定される。2011年2月8日、アメリカ統合参謀本部が「国家軍事戦略(NMS)」を発表。10年2月にオバマ政権発足後に初めて発表されたQDRと、同年5月にやはり政権発足後初めて発表されたNSSを踏まえて、05年以来、6年ぶりに改定されたもの。アジア太平洋地域を最も重視する内容で、今後数十年にわたってこの地域でアメリカ軍が強固なプレゼンスを維持すると明記。そのうえで、東シナ海、南シナ海、サイバー空間などにおける中国の軍事活動拡大への警戒感を表明するとともに、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなどとの軍事的連携を深める方向を示している。一方で、財政赤字がアメリカの国防予算を圧迫していることを深刻なリスクと指摘。日本に対しては、自衛隊の海外での活動を促し、日本と韓国の防衛協力を後押しするなど、同盟国にも負担を求めている。また、北朝鮮については、権力継承が地域の不安定や核拡散につながる可能性に懸念を表明している。