南米のエクアドル東部、アマゾン川源流部にあるヤスニ国立公園内のイシュピンゴ、タンボコチャ、ティプティニ地区(頭文字でITT)に存在する石油資源に関して、エクアドル政府が採掘をしない代わりに、採掘した場合に得られる石油収入の半分にあたる36億ドル(約2800億円)を国際社会に拠出してもらうという計画。ITT地区の原油埋蔵量は約8億5000万バレルで、採掘しなければ4億700万トンの二酸化炭素が、そのまま地中に封じ込められることになる。また、森林の伐採回避を通じても、8億トンの二酸化炭素排出が防がれる。加えて、青森県ほどの広さをもつヤスニ国立公園は世界屈指の生物多様性の宝庫であり、絶滅の恐れがある生物種も報告されている。2010年8月、エクアドルのラファエル・コレア大統領の提案を受けて、国連開発計画(UNDP)にヤスニITT信託基金が設立された。各国政府や企業などの資金拠出者には、炭素排出枠となる二酸化炭素量を記載した「ヤスニITT保証書」が発行される。エクアドルも国際社会の拠出と同額の36億ドルを負担し、合計72億ドルの基金を自然エネルギーの利用、先住民族の生活環境の保護など、国内での持続可能な社会づくりに充てる計画となっている。ただし資金集めは難航しており、エクアドル政府は、11年末までに当初資金として1億ドルが集まらなければ、計画を撤回して石油採掘を始めることもあり得るとしている。