北大西洋条約機構(NATO)の主要任務と戦略を示した公式文書のこと。NATOが創設された1949年の翌年、50年に初めて策定されて以降、その時々の情勢に沿って改定が行われてきた。最新の新戦略概念は、1999年以来となる7番目の改定で、2010年11月19日、ポルトガルのリスボンで開かれたNATO加盟国28カ国首脳会議で採択された。今後10年間の行動指針となる今回の改定は、新機軸として、集団防衛の中核に初めてヨーロッパのミサイル防衛(MD)網の構築をすえるとともに、「協調的安全保障」として域外国・機関との関係強化が打ち出された点が特徴。ヨーロッパ全域を守るMD網は、イランのミサイル攻撃などへの対応を念頭に今後10年をかけて構築され、アメリカの本土防衛のためのMD網と連結して欧米全域をカバー、さらにロシアの参加も促すとしている。NATO新戦略概念の骨子は次の通り。(1)集団防衛体制を維持し、直接的脅威となるテロやサイバー攻撃など新たな脅威にも対応する。(2)防衛手段としてMD網の整備を推進する。(3)ロシアとは、MDや対テロでの協力を拡大する。(4)「核なき世界」に向けての環境整備を進めるが、核兵器が存在する限り、核兵器と通常兵器による抑止力を戦略の基礎に置く。(5)アフガニスタンを教訓に、地域紛争解決には軍事以外に政治や民政など文民活動も重視する。(6)域外諸国や国連などとの協力関係を強化し、ロシアとは戦略的パートナーシップをめざす。