国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第35回世界遺産委員会は、2011年6月24日に小笠原諸島(東京都小笠原村)を世界自然遺産に、また翌25日に平泉を世界文化遺産に登録することを決定した。小笠原諸島は、東京都心から南に約1000キロ離れた太平洋上にあり、南北約400キロに及ぶ、父島、母島など大小約30の島からなる。大陸と一度も陸続きになったことがないことから生物が独自の進化を遂げていて固有種が多く「東洋のガラパゴス」「進化の実験場」などと言われている。特にカタツムリなどの陸産貝類は生息する106種のうち100種(94%)が固有種で、絶滅率も22%と低い。また国際的に絶滅が危惧されるオガサワラオオコウモリ、クロアシアホウドリなどの野生動物も57種に上る。固有種の生息を脅かす外来種対策などに、行政機関と住民が一体となって取り組んでいることが高く評価された。日本の自然遺産としては白神山地(青森・秋田)、屋久島(鹿児島)、知床(北海道)に次ぐ4例目となった。また、平泉(岩手県平泉町)は、12世紀に東北で栄えた奥州藤原氏の藤原清衡(きよひら)が、仏の住む極楽浄土にしようとして建立した中尊寺をはじめ、ゆかりの毛越寺(もうつうじ)、金鶏山、無量光院跡、観自在王院跡の計5資産。日本政府は06年に9資産で世界遺産委員会に推薦したが、「浄土思想との関連が十分でない」ことを理由に落選、10年に6資産で再推薦したが、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」から11年5月に浄土思想と関連が薄いとして藤原氏の住居だった「柳之御所遺跡」を外すよう勧告されたため5資産となった経緯がある。日本の文化遺産としては12カ所目。