ローマ法王庁(バチカン)の財政を管理する機関である「宗教事業協会(IOR)」の通称。「神の銀行」ともいわれる。バチカン市国以外の領地の代償としてイタリア政府から得た補償金や、信者からの献金などを原資にして1942年に設立された。法王直属の枢機卿による委員会が運営する。バチカン銀行をめぐっては、マフィアとのかかわりやマネーロンダリング(資金洗浄)の疑惑が古くから指摘されてきた。70年代後半から80年代初頭にかけては、改革を唱えたヨハネ・パウロ1世が就任わずか1カ月後に急死したり、不正融資が発覚した主力取引行の頭取が変死体として発見されたり、不正を調査していたイタリア当局の検事らが相次いでテロの犠牲となったりした。2010年9月、イタリア司法当局は、2000万ユーロ(約23億円)と300万ユーロ(約3億4000万円)の送金にマネーロンダリングの疑いがあるとして、バチカン銀行のゴティテデスキ総裁らに対する捜査を開始した。09年11月にも3年間で6000万ユーロ(約69億円)の送金が問題となっていたが、ローマ市内にあるバチカン市国は独立国家であるため、これまでイタリア当局の捜査の手はほとんど及んでいない。