世界各国の人権問題を調査し、政策提言を行う人権NGO。アメリカのニューヨークに本部を置く。東西ヨーロッパ諸国とアメリカ、カナダが、人権の尊重などで合意した1975年のヘルシンキ宣言に基づき、ソ連や東ヨーロッパにおける人権状況を監視するヘルシンキ・ウォッチとして78年に発足。その後、81年に中米の内戦での戦争犯罪や、それらの当事国に援助を行うアメリカなど各国が果たしている役割について調査するアメリカ・ウォッチも設立され、さらに85年にはアジア・ウォッチも設立されるなど、対象を拡大。88年に全世界をカバーするヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)に改称された。独裁国家での人権侵害や、紛争地帯におけるジェノサイド(集団殺害)などの戦争犯罪の事実を調査し、メディアに知らせ、解決に向けたロビー活動や政策提言を行っている。対人地雷禁止条約の実現や国際刑事裁判所の設立においても、大きな役割を果たし、97年にはノーベル平和賞を受賞した。その後、ドメスティック・バイオレンスや人身売買、同性愛者の権利などにも取り組みを広げている。最近では、2011年2月22日、リビアで続く反政府デモに対する当局の銃撃について「殺害を命じた司令官らに法の裁きを」と題したニュースリリースを発表。リビアの状況についての調査結果を明らかにしたうえで、リビア高官に限定した制裁や、銃撃などの犯罪に対する迅速な捜査などを各国政府に求めた。日本については、「東京都知事は同性愛者差別発言を撤回すべき」と題したニュースリリースを同月1日に発表。石原慎太郎都知事の10年12月の、同性愛者に対する発言に懸念を表明。同性愛者への差別を「悪化させる可能性がある」として撤回を求めている。09年4月、東京オフィスが設立された。日本代表は弁護士の土井香苗。