イギリス首相官邸に第11代目のネズミ獲り要員として「就任」した、4歳ほどになるオスのぶち猫。官邸が所在するロンドンのダウニング街周辺はネズミが多く、官邸自体も18世紀に建築された古い建物で、ネズミが頻繁に出没してきた。そこで、断続的にではあるものの、ネズミ獲りの目的で猫が飼われてきており、初代となる1924年の「トレジャリー・ビル(Treasury Bill)」以来、人々から「Downing Street cats(ダウニング街の猫)」として知られるようになり、1989年に採用された9代目「ハンフリー(Humphrey)」のころになると、官邸内では「Mouser」あるいは「Chief Mouser to the Cabinet Office(首相官邸首席ネズミ獲り、首相官邸ネズミ捕獲長などと訳される)」の肩書が与えられるようになった。この役職は厳密には非公式であるものの、ハンフリーに対しては、ときのマーガレット・サッチャー首相が年間100ポンド(約1万3000円)の予算を計上したとされ、一方でラリーには税金は使われず、官邸のスタッフたちがかけもちで世話をするという。前任の10代目「シビル(Sybil)」が2008年に退任して以来、この役職は空席になっていたが、11年になると、テレビ中継の際にネズミが室内を横切る様子が映されるような失態もあって、新たなネズミ獲り要員の導入が検討された。そこで、11年の1月初旬からバタシー地区の動物保護施設に収容されていた野良猫のラリーが、高い狩猟本能と人なつっこい性格を理由に推薦され、デイビッド・キャメロン首相やその子供たちが気に入ったため、11年2月15日に官邸に赴任した。