武力紛争の際に攻撃を控えるべき文化財を示す標章。2度の世界大戦によって文化遺産は甚大な被害を受けた。その反省の上に立ち、武力紛争や自然災害から文化遺産や文化財を守る目的で、1954年に成立したハーグ条約において文化財保護のシンボルとして指定された。同時に、武力紛争のみならず災害時の文化財救出・修復のため、96年に結成された国際的組織「ブルーシールド国際委員会」(ICBS ; International Committee of the Blue Shield)の組織名でもある。ICBSは、文化遺産保護に関係する4つの非政府組織、すなわち国際文書館評議会(ICA)、国際博物館会議(ICOM)、記念物及び遺跡に関する国際会議(ICOMOS)、国際図書館連盟(IFLA)によって結成され、人道的保護のための「赤十字」に相当する。世界19カ国にその国内委員会が設置されているが、アジアにはまだなく、日本においてもほとんど知られていない。2012年9月7日、文化庁、内閣官房、外務省、大学、非政府組織(NGO)などで構成された「文化遺産国際協力コンソーシアム」が主催して「ブルーシールドと文化財緊急活動」研究会が、東京国立博物館で開催された。研究会では、修復専門家などの人材育成、平時における準備の重要性が指摘され、アジア初となるブルーシールドを日本に設置する動きにつながると期待されている。