イギリス議会の開会式で女王が朗読する施政方針で、女王演説、女王勅語ともいう。例年11月の新会期開会時と、選挙後の議会招集時に、政府が起草した文書を国家元首である女王が裁可し、上院(貴族院)で読み上げる。長い伝統がある儀式で、まず、馬車に乗った女王がバッキンガム宮殿から到着するのを、深紅のローブをまとい、かつらをかぶった上院議員たちが、議事堂で待つ。王冠をかぶり正装した女王が到着すると、黒杖(こくじょう)官と呼ばれる上院の使者が下院議員を呼び出しに行くが、入り口の扉を閉ざされてしまい、黒杖で3回ノックした後、ようやく入場を許される。これは、1642年に、反国王派議員を逮捕しようとした当時の国王チャールズ1世の立ち入りを、下院議長が拒否したことに由来し、それ以来、下院には国王は入場していない。また、上院には下院議員の座る席はなく、与野党の幹部を先頭に、入り口付近で立ったまま女王の朗読を聴く。国家元首である国王と、1688~89年の名誉革命後、国王の優位に立った議会との、名実を分けた関係を象徴するような儀式となっている。