原子力事故による損害の責任に関して、国境を越えた被害の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めた国際条約の1つ。1997年に国際原子力機関(IAEA)で採択されたが、2011年6月現在、未発効。同種の条約に、原子力の分野における第三者責任に関するパリ条約(1960年採択、68年発効)、原子力損害の民事責任に関するウィーン条約(63年採択、77年発効)がある。原子力パリ条約はヨーロッパを中心に15カ国、原子力ウィーン条約は中東欧と中南米を中心に34カ国が締約している。CSCはこの2条約と異なる特徴として、損害賠償が責任限度額を超えた場合は各国が拠出した基金で補うことや、異常に巨大な天災地変による原子力損害の責任は免責とすることなどを定めている。日本はどの条約も締結していないため、仮に東京電力福島第一原子力発電所の事故による被害が国外に及んで被害者から提訴された場合、裁判は相手先の国で行われ、賠償金の算定基準もその国の基準となって賠償額が膨らむということも考えられる。CSCは締約国5カ国、原子炉熱出力の合計が4億キロワットという要件で発効し、日本は締結をアメリカ(2008年に批准)から要請されている。これまでにアメリカのほかアルゼンチン、モロッコ、ルーマニアが締約しており、日本が加われば発効することになるが、関連する国内法を締約前に整備する必要がある。