国際裁判において、紛争当事国間の特別の合意なしに行われる一方的な提訴に対し、裁判を始めることができる国際司法裁判所(ICJ)の権能。義務的管轄権ともいう。ICJでは、基本的に紛争当事国間の合意なしに一方的に提訴があっても裁判を始めることができない。しかし、国家は、あらかじめICJの強制管轄権を受諾するかどうかを選択でき(選択条項)、紛争当事国の双方が強制管轄権の受諾宣言を行っている場合、一方的な提訴に対して応訴する義務が生じる。ただし、受諾宣言をしていても、有効期間を設定したり、特定の紛争は除外したりと、様々な留保条件が付されている場合が多い。また、強制管轄権の受諾宣言をしているのは、国連加盟全193カ国中67カ国(2012年8月現在)で、安全保障理事会(安保理)常任理事国の中では、イギリスのみ。日本は、1958年に受諾宣言をしているが、日本と領有権を争うロシア、中国、韓国は受諾宣言をしていない。2012年9月26日、野田佳彦首相が、国連総会の一般討論演説で、各国にICJの強制管轄権を受諾するよう呼びかけた。