15世紀半ばから19世紀末まで、フィリピン諸島とボルネオ島の間に連なるスールー諸島に存在したイスラム王国。スルタン(君主)による統治の下、海洋交易で栄え、ボルネオ島北部まで支配を広げたが、1898年にアメリカ領フィリピンに併合されて王国は消滅した。ただしボルネオ島北部については、それ以前にイギリスが租借して統治下に置いていた。その後、イギリスから独立したマレーシアの建国に伴い、ボルネオ島北部は1963年にマレーシア領のサバ州となった。これに対し、スールー王国を継承したとするフィリピン政府がサバ州の領有権を主張したため、マレーシアとの間で領土問題が生じたが、後にフィリピン側は問題を棚上げする姿勢に転じた。マレーシア政府はサバ州に関して、イギリスから租借地契約を引き継いだとの立場を取り、スールー王国のスルタンの末裔(まつえい)に、名目的な租借料として年間5300リンギット(約16万円)を支払っている。2013年2月、「スールー王国軍」を名乗るフィリピンのイスラム系武装集団がサバ州に不法上陸。サバ州の返還を要求し、海岸沿いの集落を占拠したことから、マレーシア軍が武力掃討作戦を実行する事態に至り、領土問題の存在が再び浮かび上がった。