正式名称は「文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」。通称「ユネスコ条約」ともいう。各国の文化財を不法な輸出入から守ることを目的としたもので、1970年、国際連合教育科学文化機関(UNESCO ユネスコ)により採択。日本では、2002年に批准・発効された。対象となるのは締約国がそれぞれ指定した文化財で、日本では、国宝を含む重要文化財(絵画、彫刻、工芸、古文書など)、重要有形民俗文化財(衣装、装身具、道具、家具など)、史跡名勝天然記念物(遺跡、建造物、景観、動植物など)が該当する。締約国は、自国の指定文化財が盗取された時、遅滞なく外国に通知し、外国から通知を受けた時は当該文化財を「特定外国文化財」に指定してその輸入を禁止。盗難文化財の被害者は、盗品と知らずに取得した「善意の取得者」であっても、代価の弁償を条件に、盗難後10年までは返還請求が認められている。02年11月現在での締約国は、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、インド、中国、韓国など96カ国に上る。12年10月、長崎県対馬市から国の重要文化財と県の有形文化財の仏像2体、及び仏典が韓国人窃盗団により盗難に遭い、翌13年1月に仏像2体が韓国で回収された。この事件で、韓国中部のある寺院が、仏像2体のうち県の有形文化財「観世音菩薩坐像」は、14世紀に同寺でつくられたと主張。日本に略奪された疑いがあるとして、大田(テジョン)地方裁判所に移転禁止の仮処分申請が出され、13年2月26日、仮処分が決定した。国際法に矛盾するこの決定に、日韓両国で疑問の声が挙がっており、菅義偉官房長官も「外交ルートを通じた返還を求めていく」としている。