2010年4月20日、アメリカ南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾にある原油採掘基地が爆発し、6月10日現在も原油流出が続いている事故。水深約1500mの海底と海上施設を結ぶパイプが破断し、海底油田から大量の原油が海中に噴き出す事態となった。爆発の原因は究明されていない。原油流出量について、採掘基地を所有するイギリスの石油会社BPは日量800キロリットルと発表していたが、10年5月27日、アメリカ地質調査所(USGS)などの調査団が日量1900~3000キロリットルとする推定値を発表。この時点で、事故発生後の総流出量は少なくとも約7万キロリットルに達する計算となり、1989年にアラスカ沖で起きたタンカー「エクソン・バルディーズ号」座礁事故(原油流出量約4万キロリットル)を大幅に上回る、アメリカ史上最悪の原油流出事故であることが明らかになった。BPは原油流出を止める応急措置として、高さ約12mの鉄製ドームを原油の噴出口にかぶせ、その天井の穴に新たなパイプを付けて吸い上げる方法を試みたが、ドーム内に氷状の結晶が大量に付着して穴がふさがれ、失敗した。BPはこれに続き、噴出口に泥やセメントを高圧で大量に流し込んでふさぐ「トップキル作戦」(top kill procedure)を行ったが、やはり失敗に終わった。根本的な解決方法は、油井の主坑道の横から新たに「救助井」を掘削して流出を止めるしかない。BPはその作業を進めているが、完了は10年8月ごろになる見通しで、それまでの間、環境汚染が悪化の一途をたどる事態が危惧されている。メキシコ湾沿岸部は、エビやカキなどアメリカ有数の魚介類の産地であり、また沖合は大西洋クロマグロの産卵海域ともなっている。