フィリピン南部のミンダナオ島で1970年代から続く紛争。同島にはもともとイスラム教徒の諸民族が住んでいたが、20世紀に入り、フィリピンで多数を占めるキリスト教徒が、政府の奨励を受けて大量に移住。イスラム教徒の土地への侵害が続いた。このため、1970年代に南部フィリピンの分離独立を目指すイスラム教徒の武装組織モロ民族解放戦線(MNLF)が政府軍との間で戦闘を開始。ミンダナオ島南西部からスールー諸島にかけての地域は内戦状態となった。その後、89年に4つの州への自治権が付与され、96年には政府とMNLFの間で和平協定が締結された。しかしMNLFの分派であるモロ・イスラム解放戦線(MILF)は戦闘を続行した。2003年には政府とMILFの間でも停戦合意が成立。08年7月、両者は大幅な自治の拡大などで合意した。しかし翌8月、覚書を交わす直前に、反対派による一時差し止めを最高裁判所が認めたことで交渉が決裂し、空爆を含む激しい内戦が再燃。多くの住民が避難し、09年8月の時点でも25万人が避難先にとどまっている。同年7月、政府とMILFは、和平予備交渉の再開などをうたった共同声明を発表。9月には、仲介役のマレーシアのほか、複数の第3国やNGOがオブザーバーとして同席する「国際連絡グループ(ICG)」を創設することで同意した。同年12月2日には、日本、イギリス、トルコと4つのNGOで構成されるICGが発足。同月9日に行われた和平交渉で、フィリピン政府とMILFは、国際停戦監視団の活動再開で合意した。