アメリカの政治学者、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が提唱した理論。軍事力のような物理的強制力を「ハードパワー(硬い力)」といい、文化や世論などのような強制的でない影響力を「ソフトパワー(軟らかい力)」という。政治権力はこの二面性をもつといわれ、たとえば、ブッシュ政権はソフトパワーを軽視し、ハードパワーを重視しすぎたためにイラク戦争に失敗し、国際的信用が失墜したといわれる。しかし、過激派に対してはソフトパワーだけでは不十分だとも指摘される。そこで、「ハード」と「ソフト」を併用した能力、つまり「スマートパワー(賢明な力)」が必要と考えられた。2007年11月、ナイ教授はリチャード・アーミテージ元国務副長官ら外交・安全保障などの専門家と、「スマートパワー」の重要性を説いた報告書を発表した。