チリ北部のサンホセ鉱山落盤事故で、地下に閉じ込められた作業員を地上に助け出す際に使われた救出用カプセル。伝説の不死鳥にちなんで「フェニックス」と名づけられた。落盤事故は、コピアポ郊外のサンホセ鉱山で、2010年8月5日に発生。作業員33人は地下約700メートルの坑道に閉じ込められたが、17日後の8月22日に全員の生存が確認された。「フェニックス」は、直径54センチ、全長4メートル、重さ450キロの鋼鉄製。アメリカ航空宇宙局(NASA)の技術アドバイスを受け、チリ海軍が設計。チリの国旗と同様、白、青、赤の3色に塗られた。救出作業は、長さ約620メートル、直径約70センチの救出用トンネルを掘削し、その縦穴を通じ、大型重機とケーブルでカプセルを引き上げ、10~15分ほどかけて1人ずつ地上に運ぶ方法。作業員が着用するヘルメットに搭載したヘッドホンマイクで、引き上げ中も地上と交信できる。カプセル内にはビデオカメラや、心拍数、血圧等の測定器を搭載し、地上の医師が作業員の様子や健康状態をチェックできるようになっている。救出作業は12日午後11時(日本時間13日午前11時)に開始。カプセルは順調に動作し、作業員の体調も悪化することなく、当初48時間ほどかかると見込まれていた作業員全員の救出時間は、約22時間半と大幅に短縮された。13日午後9時55分(同14日午前9時55分)、最後の33人目、リーダーのルイス・ウルスアさんが無事救出され、事故以来、69日ぶりに帰還した。フェニックスは計3台製造されており、救出に使われたカプセルは、首都サンティアゴの大統領府前に展示され一般公開された。使用されなかった2台は、事故現場近くのコピアポ市内と、中国の上海万博チリ館でそれぞれ展示されることになった。